一般社団法人日本公衆衛生看護学会

第8回 保健師活動を「公衆衛生看護学の体系」で振り返ってみませんか?

日々保健師として仕事をしているけれど、「これでいいのかな?」と思うことはありませんか?また後輩から「私のやっている活動で何が足りないのですか?」と言われたときに自信をもって答えられますか?今回は、保健師活動の振り返りや現任教育に活用できる「公衆衛生看護学の体系」を紹介します。(学術実践開発委員会)

 「公衆衛生看護学の体系」って何か難しそうだけど、何のこと?
 日本公衆衛生看護学会では「公衆衛生看護学とは、公衆衛生看護実践の向上に寄与する知識、技術、規範並びに理論の生成やその発展について考究する学問である」としています。
 「公衆衛生看護学の体系(JAPHN2017年度版)」は、保健師が公衆衛生看護活動を実践していく上で必要な学問を体系的に整理したものです。現場で働く保健師がその内容を理解することで、自身のスキルアップや人材育成に活用できます。
「公衆衛生看護学の体系」を理解すると、何に役立つの?
 私たち自身のスキルアップや人材育成に活用できます。
 地域では様々な職種が活躍していますが、保健師は何を学んだ上で活動しているのかをもとに、保健師の役割や能力を他職種に示すことができます。また、人材育成としての現任教育や保健師自身の活動の振り返りにも活用できます。
 「公衆衛生看護学の体系」で保健師の技術が表せるということ?
 保健師の技術は複雑で、一言では表せないですよね。
 学問的には、「公衆衛生看護学原論」と「公衆衛生看護学対象論」「公衆衛生看護学方法論」で構成されると考えられます。
 保健師は、これらの公衆衛生看護学の理念や論理に基づいて、対象が持っている課題に応じて適切な方法を選択し、組み合わせて活動を実践しているのです。
「公衆衛生看護学原論」と「公衆衛生看護学対象論」「公衆衛生看護学方法論」…それぞれ、簡単にいうとどのような内容なのかしら?
 「公衆衛生看護学原論」は保健師の根本となる原則を述べたもので、保健師の定義と法的根拠、保健師の使命、保健師のコンピテンシー、公衆衛生看護の理念や倫理、などが含まれます。
 「公衆衛生看護学対象論」は対象となる人々を“生活している人間”として理解するための知識です。
 そして、対象に合わせてどのような手段・方法を用いるのかを選定するために必要な知識が「公衆衛生看護学方法論」です。
 保健師活動を実践するために、私たちは他の知識も使っている気がするけど…。
 その通りです。「公衆衛生看護学原論」「公衆衛生看護学対象論」「公衆衛生看護学方法論」を支えているのが、「看護学と看護の基礎科学」と「公衆衛生の基礎科学」です。
 看護学は当然ですが、地域診断のためには疫学や保健統計の知識、環境や人々の行動への理解、保健医療福祉行政への理解も必要です。これらが「公衆衛生の基礎科学」です。
 じゃあ、私たちは「公衆衛生看護学の体系」に基づいて実践すればいいのかな?
 体系があって実践があるのではなくて、良質な実践に基づいて体系ができるのです。実践が倫理的・効果的・効率的に進められるために知識が作り出され、それを一定の原則で整理したものが体系です。
 つまり、保健師が実践して得た経験である「こう活動すれば住民の健康レベルが向上する」を言語化していくことで、公衆衛生看護学がより発展していきます。
 現任教育や仕事の振り返りに「公衆衛生看護学の体系」を使ってみたいけど、どうしたらいいですか?

 体系の概要や説明は、日本公衆衛生看護学会のホームページを参考にしてください。
https://japhn.jp/about_phn/phn_system
 また、具体的な事例を基に体系との関連を学べるよう、保健師ジャーナルで「公衆衛生看護学の体系を事例で学ぶ」の連載が2019年度第6号からスタートしました。こちらも是非ご覧になってください。

 

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