研究なう
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配信例(研究なう 118号 2025年4月配信 より抜粋)
※毎号、4~5例の学術記事を掲載しています。配信例として、一部を抜粋してご紹介します。
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スマホ依存の高齢者、運動時間や日常生活動作に悪影響あり
スマートフォン(スマホ)が広く流通するようになってから20年近くが経過し、高齢者の利用も世界各国で急速に伸びています。スマホの使い過ぎや依存は特に青少年への影響が研究されてきましたが、トルコの研究チームは同国で、高齢者のスマホ依存と身体活動や日常生活動作との関連を調査しました。同国サカリヤにある高齢者支援センターで2024年、65歳以上の参加者計94名の協力を得て、質問票によるデータ収集と椅子から立ち上がって3メートル歩き、椅子に戻って座るまでの時間を測る身体能力テスト(Timed Up and Go, TUG)を実施しました(スマホを6カ月以上使用、認知症などない人が対象)。スマホ依存は6点のライカ―ト尺度計10問から成るスマホ依存スケール短縮版( https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0083558 )を用いて測り、女性では31点以上、男性では33点以上の人を「スマホ依存」としました(点数が高いほど依存度が高い)。参加者の平均年齢は70.67歳、約半数が女性(51.1%)で、スマホ依存に該当するのは45人、しないのは49人でした。年齢、性別、学歴、アルコール使用、働いているかどうかなどとスマホ依存の間には有意な関係は見られませんでした。スマホ依存と①仕事や家事、趣味などで体を動かす時間(一週間の合計、PASE)、②食事の用意や買い物、洗濯、交通機関利用などの日常生活動作をどの程度自分でできるか(IADL)、③バランス能力(FAB-T)、④TUGそれぞれとの関連性はパス分析と構造方程式を用いて検証しました。スマホ依存は①と②に有意なマイナスの影響を及ぼしており、スマホ依存の高齢者は身体活動の時間が少なく、日常生活動作能力も低くなる傾向が示されました。バランス能力(③と④)については、有意な影響は見られませんでした。著者らは論文の中で、スマホには運動を助けたり、日常生活に役立つ機能があったり、高齢の利用者にそうした機能についての啓発・教育を行うことが有効なのではとも述べています。
Demir, O. B., Bilgin, A., & Yilmaz, F. T. (2025). Smartphone addiction among elderly individuals: Its relationship with physical activity, activities of daily living, and balance levels. BMC Public Health, 25(1), 965.
https://doi.org/10.1186/s12889-025-22145-0
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