国際看護師協会大会(International Council of Nurses Congress)2025 参加報告
国際看護師協会大会(International Council of Nurses Congress)2025 参加報告
国際委員会 坂本 真理子(愛知医科大学)
2025年6月9日から13日、国際看護師協会(International Council of Nurses Congress:以下ICN)大会2025がフィンランド共和国ヘルシンキにある the Messukeskus Helsinki, Expo and Convention Centreで開催されました。
皆様ご存じのように、ICNは130 以上の各国看護師協会から構成され、世界中の看護師を代表する組織です。2年おきに大会が開かれ、今回は89ケ国から7000人を超える看護職が参加しました。大会のテーマは“Nursing Power to Change the world!(世界を変える看護の力!)”です。
6月9日の開会式は4000人余りの定員のホールが満席で、まるでコンサートのような熱気に包まれていました。会長であるカマラ氏の「看護には世界を変える力がある。明日を変えよう」という力強いメッセージのもと開会式がスタートし、オリンピックのように、各国の看護協会の代表者が順番にプラカードを持って登壇しました。登壇の仕方は、それぞれのお国柄をよく表しており、観客席にいる参加者からもその都度大きな声援の声が上がりました。日本の着物姿の日本の代表団の登壇では、にぎやかな登壇が多い中、上品な静けさがむしろ印象に残りました。
連日、エネルギッシュな内容のセッションが続く中でも特に印象に残った3つのセッションについてご報告したいと思います。災害看護学のセッションでは、南スーダンやレバノン、パレスチナでの医療者の経験やICNとパートナーシップを結んで活動する救援団体の活動が紹介されていました。危機的な状況にある国や地域では、深刻な経済危機とともに看護職の教育の中断や、海外へのがれた看護師の移動、医療者の人材不足、看護職のメンタルヘルスの問題などが生じています。戦禍にあるウクライナから参加してくれた看護師は「ウクライナの看護は高いレベルを誇ります。戦争が終わって皆様にウクライナの看護実践についてご紹介できる日を待っています」と発言され、参加者からは惜しみない拍手が送られていました。「専門職としての人生を脅かされ、明日会う予定であった人をケアする体験である」ことを聞いた時、胸が締め付けられるようでした。ICNはWHOとともに災害や紛争などで危機的な影響を受けた地域(crisis-affected areas)へ現地の保健省や、救援団体とパートナーシップを結んで支援を行っていたことを知ることが出来たのも収穫でした。
北欧の看護実践を紹介するシンポジウムでは、最後にスウェーデンの有名なポップグループであるABBAのメンバーからICN大会をお祝いするビデオメッセージが届きました。各界の著名人からのメッセージが寄せられるのもICNならではだと思いましたが、最後に流れたABBAの音楽に合わせて会場は大盛り上がりでした。お祭り的な要素があるICN大会とは言え、ほぼ全員が立ち上がって、踊っていたのには、度肝を抜かれる経験でした。
自分の語学力の心配をしながらも、小人数の申し込み制のマスターコース「変化するヘルスケア環境における文化的調停(Cultural mediation in a changing health care environment masterclass)」に参加してみました。Mediatorの資格をもつ講師のファシリテートのもとで、文化的な調停とはどんなことなのか、通訳者と文化的な調停者(Mediator)の違い、Mediator の役割などの短い講義のあと、27名の参加者が4つのグループに分かれて文化的な調停を必要とする事例について話し合いました。多国籍・多民族によるグループワークではまさに、異文化を体験する機会となり、経験豊かな講師の文化的な側面からのアプローチに対するアドバイスなど大変参考になりました。
世界の多くの看護職と出会い圧倒されながらも、今回の大会のテーマどおり、世界を変える看護のエネルギーを肌で感じることができて、大いに刺激を受けたICN大会でした。ICN大会参加者はヘルシンキ市内の全公共交通機関(列車、地下鉄、バス、トラム、フェリー)を無料で使えるアプリが使えました。ICN大会が開催された6月、北半球の高緯度に位置するフィンランドでは23時頃まで日が落ちないため、プログラム終了後はヘルシンキ・ライフを満喫できた参加者も多かったと思います。
次回は2年後の2027年7月8日から11日に台湾での大会が予定されています。皆様も参加をご検討されてみてはいかがでしょうか。
