一般社団法人日本公衆衛生看護学会

第20回 デジタル社会は保健師活動を変える?変えない?

 令和3年9月に日本のデジタル社会実現の司令塔としてデジタル庁が発足しました。日本が目指すデジタル社会は保健師活動にどう関連するのでしょうか 。春山早苗理事が解説します。(2022年12月6日掲載)

デジタル社会って何?
デジタル社会とは、インターネットやその他の高度情報通信ネットワークを通して自由かつ安全に多様な情報や知識を世界的規模で入手・共有・発信し、また情報通信技術(ICT)を用いた情報の活用により、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会(デジタル社会形成基本法 第二条参照)のことです。
デジタル社会が目指しているのは何?
デジタルの活用により、一人ひとりがライフスタイルやニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せを実現できる社会を目指しています。このために「健康・医療・介護」、「教育」、「防災」、「こども」等の準公共分野*のデジタル化やデジタル化による地域の活性化等の推進が求められています。保健師活動にも関連しそうですね。
*国、独立行政法人、地方公共団体、民間事業者等といった様々な主体がサービス提供に関わっている分野
デジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉も耳にする機会が多くなったけど…
DXは、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」(エリック・ストルターマン,2004)とされています。総務省により、自治体においてもDXが推進されています。
自治体においてDXが推進されているのはなぜ?
人口減少時代に入り、社会全体としての労働力の圧倒的な不足、そして自治体職員数のさらなる減少が見込まれる中、多様化する住民ニーズに対応するために、限られた行政経営資源による持続可能で質の高い公共サービスの提供が喫緊の課題となっています。民間資源の活用にも限界が生じる可能性があり、DXの推進が求められています。
自治体におけるDXの推進で何が期待されているのでしょう?
次のようなことです。
・デジタル技術やデータの活用による住民の利便性の向上
・デジタル技術やAI等の活用による業務効率化、人的資源は行政サービスの更なる向上のために配分
・データ様式の統一化や多様な主体によるデータ流通の促進によるエビデンスに基づく行政の効率化・高度化
・民間を含めた多様な主体との連携による新たな価値の創出
自治体における保健福祉介護分野のデジタル化にはどんな取組があるの?
ロボットによる高齢者の見守りや災害時の避難情報の発信、介護認定されていないハイリスク者を探し出すAIを活用した介護予防、健康ポイントアプリによる健康づくり事業、母子手帳アプリを活用した子育て支援、AIによるリスク度や類似事例を確認できる児童虐待対応システム等々、様々な取組がなされています。
保健師活動の基本的な考え方は変わりませんが、自治体DX推進に期待されていることを踏まえて、データに基づく健康課題の明確化や活動の見える化・評価、デジタル技術を用いた住民へのアプローチ方法等、保健師活動においてもデジタル化を考えていく必要がありそうですね。まずは所属自治体のデジタル化の動きを確認していきましょう!

参考URL
・デジタル庁.デジタル社会の実現に向けた重点計画.
https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program/
・総務省.地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】(令和4年9月).https://www.soumu.go.jp/main_content/000835268.pdf
・総務省.自治体におけるAI活用・導入ガイドブック(令和4年6月).
https://www.soumu.go.jp/main_content/000835256.pdf

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